study of Ikeda laboratory

頭足類とは

 私たちのグループは頭足類を研究対象としています。頭足類とはイカ類、タコ類、オウムガイ類から構成される一群で、分類学的には貝の仲間である軟体動物に属しています。しかし、他の軟体動物とは異なる多くの特徴を頭足類は持っています。例えば、強靭な筋肉組織に裏打ちされた遊泳力は頭足類の広範な行動圏を生み出し、それはスルメイカの大回遊などに見ることができます。運動能力を得て大海に漕ぎ出した軟体動物、それが頭足類と言えるかもしれません。


頭足類と知性

 私たちが特に注目している頭足類の特徴は、発達した神経系です。頭足類の脳は無脊椎動物の中で最大サイズですが、体重比でみると、脊椎動物である魚類や爬虫類を凌駕し、中には鳥類や哺乳類並みのサイズの脳をもつ頭足類もいます。また、頭足類の感覚器はよく発達し、眼はヒトと同じレンズ眼で高い分解能をもつことが知られています。これらに呼応するように頭足類は高い学習・記憶能を示します。しかし、彼らがこのような知性を何に用いているのか?何故そのように大きな脳を持つに至ったのか?といったことは謎です。



【頭足類と社会性】

 ところで、頭足類の中には群れをつくる種がいます。ヤリイカやアオリイカなど、英語でSquidと表現される種がそうです。Squidに見る群れは単なる集合体ではなく、群れの構成員個々が何らかの役割をもつ集団であると示唆されます。つまり、彼らは発達した社会性をもっている可能性があります。実際に、頭足類は体の色や形を様々に変化させるボディーパターンによって種内でコミュニケーションをとっていると以前から指摘されています。視覚による仲間との会話です。頭足類がもつ巨大脳の不思議は社会性と関わっているようにみえます。



【生活史という見方】

 頭足類を考える時に大切な視点がもう一つあります。それは彼らの生き様です。頭足類は、浅海から深海、熱帯から寒帯と、海洋のあらゆる場に適応したグループで、食物連鎖網の中にあっては被食者、捕食者双方の立場から重要な役割を演じています。また、寿命が1年程度と短く成長が速いことから“Live fast, die young”などとも表現されます。タコ類に見る卵保護を除けば、親は産卵後に死亡することから、世代間のオーバーラップがない単年性の生物が頭足類であるともいえます。イカは日本人が最もよく食する水産物の一つですが、その持続的資源利用のためには彼らの天然での動態を理解することが肝要です。実はそのことは「頭足類は巨大脳を何に使うのか?」という問に答えることにも繋がります。つまり、個々体の行動を知ることにより集団の動きをも理解するという考えです。行動と資源動態という点から私たちは頭足類の生活史にも関心をもっています。



【水産学と頭足類】

 食としての頭足類を考えた場合、その供給方法は狩猟的漁獲のみではなく、養殖という方法も考えられます。「増やす漁業」です。しかし、頭足類の完全養殖は実用化されていません。それは頭足類の飼育が難しいからです。水族館で魚はたくさん見かけますが、イカはあまり見かけることはありません。実は、イカは大変デリケートで人工環境に弱く飼育が難しい海洋生物の代表ともいえます。私たちのグループは、頭足類を飼育して身近に観察することでその謎解きをするという方法を採っています。飼育研究です。これは私たちにとって大きな武器といえます。ただ、飼育はどのような種に対しても上手く適用できる訳ではありません。そのため私たちは、養殖への応用と実験動物の確保という観点から頭足類の飼育技術開発にも興味を抱いています。さらには、ここで明らかにされた事柄は頭足類の天然での資源動態解明の基礎にもなると思われます。



【これから】

 以上のような背景をもとに、私たちは頭足類を対象とした動物行動学的研究、自然史的研究、そして飼育技術開発研究の3つを展開しています。これらは一見異なるテーマのようですが、個々が有機的に繋がり互いに示唆を与えることが期待されます。そして、これらを統合することで、頭足類から生命の妙を解き明かす「頭足類学」という新たな学問の創成を私たちは目指しています。




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