|
1.サンゴモとは?
サンゴモは、細胞の内外に石灰質を沈着して、石のように硬くなる紅藻である。この藻類は、サンゴ礁形成のみならず、ウニや貝類幼生の変態や、サンゴ幼生の着底を助ける生物として、重要な役割を果たしている。サンゴモには、有節サンゴモと無節サンゴモの2つがあり、明瞭な直立体をもたない扁平な種の多くは、本研究で対象にした無節サンゴモである。
2.サンゴ礁の無節サンゴモの種は、遺伝的な実体を反映しているか?
琉球列島では、これまでに3科8属約20種の無節サンゴモが報告されている。これらの種には、インド−太平洋域から広く分布が報告されている種や、近年、形態学的な特徴をもとに、属や種の定義が変更された種が含まれている。無節サンゴモの種の同定は、外形的な特徴のみでは不可能な場合が多く、栄養組織と生殖器官の特徴を観察する必要がある。さらに、組織の観察には、藻体の石灰質を除
くなど、ほかの大型藻類にくらべて時間がかかるため、現状では、形態的特徴による正確な同定がなされた標本にもとづく分子データがほとんどない。
そこで、琉球列島のサンゴ礁域に多産する無節サンゴモの8種(図1〜8)について、形態から正確に同定した標本の塩基配列を比較することによって、形態にもとづく分類が遺伝的にも支持されるか確認した。
現在までに、8種のうち6種は、種内の遺伝的変異がサンゴモ目の同属種間の変異に相当することから、種内に別種あるいは隠蔽種を含んでいることが分かった。また、属や亜科レベルでの分類学的な見直しが必要なことも明らかになった。
今後は、これらの結果を踏まえて、問題のある種の形態的特徴や分布を考慮して、分類学的な定義の変更を提案していく予定である。
3.見過ごされてきた生物を分類する
サンゴモ以外にも、石灰質を体に沈着して硬くなり、扁平な形になる紅藻類がある。この中には、これまでの分類体系のどこにも合致せず、所属不明となっている種も知られている。こうした言わば「見過ごされてきた種」の研究にも、今後取り組んでいきたいと考えている。
| 図1〜8 琉球列島でよく見られる無節サンゴモ |
 |
 |
 |
 |
| 図1 ミナミイシモ Lithophyllum kotschyanum |
図2 アナアキイシモ Hydrolithon onkodes |
図3 コブイシモ Hydrolithon reinboldii |
図4 コシカイシモ Mastophora pacifica |
 |
 |
 |
 |
| 図5 イシノハナ Mastophora rosea |
図6 キブリイシモ Neogoniolithon brassica-florida |
図7 ハイイロイシモ Pneophyllum conicum |
図8 エダウチイシモ Mesophyllum erubescens |
|