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脊椎動物の視細胞には外系からの光シグナルを感受し、体内への伝達を担う視物質(オプシン)が存在する。網膜の杆体にはロドプシンが、そして錐体には色覚オプシン(赤、紫、青、緑)がそれぞれ存在する。近年、魚類では網膜以外にも視物質の存在が確認され、脳内の松果体にはエクソロドプシンが、そして脳深部には vertebrate ancient long(VAL)オプシンが発現しているのが明らかにされた。エクソロドプシンやVALオプシンは魚類の活動リズム同期のための光センサーとして、明暗に基づく日周活動(摂餌など)や光周期に基づく年活動(繁殖や回遊など)を正確に刻むためにそれぞれ働いていると考えられているが、その実体は不明である。外部環境要因としての光が体内情報として伝達されていく道筋を明らかにするためには、生息域の光環境や行動パターンが異なる魚類における網膜外視物質の生理機能を比較しながら研究することが必要である。
私は、網膜外視物質がサンゴ礁魚類の光周期に同調した周期性発現に対する役割を明らかにしたいと考えている。沖縄のサンゴ礁に生息するゴマアイゴ(Siganus guttatus, 水深0〜20mを周期的に移動)とルリスズメダイ(Chrysiptera cyanea, エダサンゴ近辺の浅海域で生活)を実験材料(図1)にして、エクソロドプシンとVALオプシンの全塩基配列決定、発現部位の特定、そして周期的変動に及ぼす要因の解明を行っている。これまでにゴマアイゴとルリスズメダイのエクソロドプシンは中枢組織に広く認められたのに対し、VALオプシンは脳深部(視床下部域)にのみ発現していることを確認した。また、(1)明暗条件(LD=12:12)で飼育した魚における網膜外視物質の発現はいずれも日周変動していること、(2)長日条件(LD=16:8)および短日条件(LD=8:16)で飼育した魚の網膜外視物質の発現は与えられた光条件に合わせて変化すること、そして(3)暗期に光に曝露すると発現量は即座に変化することを明らかにした。本研究は、松果体や視床下部で発現する視物質遺伝子の変動が第一義的には光によって制御されていることを明らかにしつつある。
浅海域では光の吸収は少ないが10m以上の水深では赤い光はほとんど吸収されて青い光が選択的に残ってくる。魚はさまざまな水深で波長の異なる光を感受しながら周期的な活動を行っているため、陸上生物とは異なった選択的光受容適応機構を持っている可能性がある。私は発光ダイオードを利用して季節(もしくは時間)にあわせた生息水深の光条件を再現し、視物質の発現パターンを解析している。発光ダイオードは単波長の光環境を容易に作ることができ、光受容機構を解析するための有効な研究ツールになりうる(図2)。
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| 図1:沖縄サンゴ礁に生息するゴマアイゴ、Siganus guttatus(左)及びエダ状サンゴ近辺で生息するルリスズメダイ、Chrysiptera cyanea(右)。 |
図2:光受容機構を解析するための発光ダイオードを利用した実験水槽。 |
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