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教授 (Professor)

辻 瑞樹 (辻 和希)  Kazuki tsuji

連絡先

903-0213沖縄県中頭郡西原町千原1番地

琉球大学農学部 亜熱帯農林環境科学科
生態環境科学分野、教授

 
電話&ファックス
098-895-8797
 
辻 瑞樹 (辻 和希)  Kazuki tsuji

プロフィール


辻 和希は昆虫類の生態学や行動学全般を扱っていますが、とくにアリなどの社会性昆虫が示す集団行動と最近ではチョウの翅色の進化に焦点を当てた研究を行っています。最近は理論的研究が多いですが、私自身、数学は大の苦手で厳密な計算は仲間の力に大部分頼っています。まあ、Darwinを例にあげるまでもなく、現代でも「理論家イコール数学ができる人」とは限らないということでしょうか。なお、辻 和希は論文著作等で使うペンネームで、本名は辻 瑞樹です。大学の講義は規定で後者を使っています。名古屋出身のみずかめ座O型。


主な研究業績

1. Tsuji, K. (1990) Reproductive division of labour related to age in the Japanese queenless ant, Pristomyrmex pungens.  Animal Behaviour 39 843-849.

2. Tsuji. K. (1995) Reproductive conflicts and levels of selection in the parthenogenetic ant, Pristomyrmex pungens: contextual analysis and partitioning of covariance. The American Naturalist 146: 586-607.

3. Tsuji, K., Yamauchi, K. (1996) Intra-colonial sex ratio variation with and without local mate competition in an ant. The American Naturalist 148: 588-596.

4. Tsuji, K., Tsuji, N. (1996) Evolution of life history strategies in ants: variation in queen number and mode of colony founding.  Oikos 76 83-92.

5. Kikuta, N., Tsuji, K. (1999) Queen and worker policing in the monogynous and monandrous ant, Diacamma sp.. Behavioral Ecology and Sociobiology 46 180-189.

6. Tsuji, K., Tsuji, N. (2005) Why is dominance hierarchy age-related in social insects?  The relative longevity hypothesis. Behavioral Ecology and Sociobiology 58: 517-529.

7. Nakamaru, M., Beppu, Y., Tsuji, K. (2007) Does disturbance favor dispersal? An analysis of ant migration using the colony-based lattice model. Journal of Theoretical Biology 248288-300.

8. Dobata, S., Sasaki, T., Mori, H., Hasegawa, E., Shimada, M., Tsuji, K. 2009Cheater genotypes in the parthenogenetic ant Pristomyrmex punctatus. Proceedings of the Royal Society of London, Series B 276: 567-574.

9. Ohtsuki, H., Tsuji, K.(in press) Adaptive reproduction schedule as a cause of worker policing in social Hymenoptera: a dynamic game analysis. The American Naturalist.

10. Matsuura, K., Vargo, E. L., Kawatsu,K.,  Labadie, P. E.,  Nakano, H., Yashiro, T., Tsuji, K. (2009) Queen succession through asexual reproduction in termites. Science. 323(5922):1687.



所属学会(役職経験)

日本生態学会(全国委員、将来計画委員、和文誌編集委員、学会賞選考委員、元英文誌編集委員)

日本進化学会(元評議員)

日本動物行動学会(運営委員、英文誌編集委員、元副会長、元英文誌編集長)

日本応用動物昆虫学会

個体群生態学会

沖縄生物学会

The European Society for Evolutionary Biology(元Journal of Evolutionary Biology Editorial Board

The International Union for the Study of Social InsectsInsectes Sociaux, Editorial Board


社会貢献

日本学術会議連携会員(第21期:2008-

沖縄県自然保護審議会委員(2006-)



受賞

日本生態学会宮地賞(1999)
 

辻 和希(辻 瑞樹) Kazuki Tsuji

アリなどにみられる,繁殖する女王と繁殖しないワーカーという分業を示す昆虫を社会性昆虫といいます. 辻 和希は,昆虫類の生態学や行動学全般を扱っていますが,とくに社会性昆虫が持つ驚くべき能力と多様性に焦点を当てた研究を行っています。


最近の主な研究内容

1. アリなどの社会生物学

アリは集団で生活するため社会性昆虫と呼ばれています。世界で1万種以上はいるだろうとされるこの謎に満ちた生物の社会の中ではどんなドラマが繰り広げられているのでしょう。社会生物学(行動生態学?進化生物学とも呼ばれます)という学問分野ではこの「迷宮」の実像が次々と明らかにされています。勤勉で全体主義の代名詞としてのアリの一般的イメージとは大きく異なり、実際のアリの巣の中では、派閥争い、ハラスメント、詐欺、果ては子殺しや親殺しまで、ありとあらゆる利己主義が渦巻いているのです。その一方で、自爆死して仲間を守る熱帯アジアのオオアリの仲間のように、自己犠牲と一致団結した集団行動が見られるのも事実です。これら対立と協同という相反する性質が入り混じった複雑系がどんな原理で進化したのかを解明することが辻の最も得意とするテーマです。従来は、行動観察が主なアプローチでしたが、今ではDNAなどの化学物質の分析、数理モデルによる解析などいろいろな手法を取り入れながら研究を展開しています。引用回数や論文数の面からは海外のライバルたちに到底肩をならべるまでには至っていませんが、優秀な若手共同研究者や学生さんにも恵まれ、質の面からは世界の最前線の一潮流をつねに創り続けていると自負しています。

このテーマの最近の主要成果

Dobata, S., Sasaki, T., Mori, H., Hasegawa, E., Shimada, M., Tsuji, K. (2009) Cheater genotypes in the parthenogenetic ant Pristomyrmex punctatus. Proceedings of the Royal Society of London, Series B 276: 567-574.doi:10.1098/rspb.2008.1215
(キャッチコピー)「クローン戦争」

 (解説) アミメアリというアリは世界でも極めつけ「変なアリ」で、女王が存在せず見た目にはワーカー(働き蟻)である個体の全てが単為生殖(いわゆるクローンを産むこと)と労働の両方を行っています。このような共同社会には、労働を怠り繁殖に邁進する利己的な裏切り者が蔓延してしまう可能性を進化生物学者は指摘してきましたが、実際、三重県の紀北町ではそのような裏切り者が存在することが分りました。裏切り者は体サイズが少し大きいのが特徴ですが、DNA分析によればそれらが「カモにする」通常個体とは異なるクローン系統に属し、裏切り者も無性的に繁殖していることが明らかにされました。これまでのデータから系譜(系統関係)推定すると裏切り者と通常個体はつい最近分かれた「同種」と考えるのが妥当のようです。種内に利己的遺伝子型と利他的遺伝子型が共存するこのシステムは今後実験進化生物学の恰好の材料となるでしょう。この論文はNatureで記事として紹介されました(実は論文として投稿時Natureには却下されのですが)。第一著者は現役大学院生のthe brightest hope 土畑重人氏(東大駒場、http://mywiki.jp/dobatan/Shigeto+Dobata/%93y%94%A8%8Fd%90l

第二著者は鯖江が生んだ自由人佐々木智基氏(元富山大、元琉大、現フマキラー)。

 

Ohtsuki, H., Tsuji, K. (印刷中) Adaptive reproduction schedule as a cause of worker policing in social Hymenoptera: a dynamic game analysis. The American Naturalist.
(キャッチコピー)「いまはゲゲルの時間だ!」

(解説) ワーカー(働きアリ?働きバチ)がやろうと思えば実はできるにもかかわらず自己産卵しないのは、互いにそうしないよう監視しているからだというのが近年の有力説です(ワーカーポリシング説)。この仕組みが進化するのはミツバチやグンタイアリにあるような血縁関係が薄い社会においてであると従来信じられて来ました(Wenseleers & Ratnieks. 2006,  Nature)。これらの種では女王が多数の雄と交尾しているためワーカーは事実上異父姉妹です(なぜそんな血縁の薄い社会が進化したのかは次に紹介するシロアリ論文を参照)。しかし、実際には血縁が濃い単女王性女王単婚の社会でもワーカー相互の産卵監視がかなり普遍的に存在していることが学問上の問題でした。この論文はこの謎をはじめて理論的に解明しました。理由をひとことでいえば、「今は働く時期である!」です。すなわち、社会性昆虫では血縁度に関係なく若い小さなコロニーではワーカーだけを育てコロニーをより大きくすることが皆にとって適応的戦略であることを計算で示しました。若いコロニーでワーカーは産卵すべきでないしワーカーが産んだ卵を育てるべきではありません。なぜなら、アリやハチの仲間ではワーカーが生んだ子供はふつう将来働かないオスにしかなれないからです(半倍数性)。この研究は社会性ハチ目コロニー内の3つの主要な利害対立(性比、ポリシング、繁殖への資源配分)を世界で初めて同時に考慮したものでもあり、動的ゲーム解析をこの分野に導入したパイオニア的研究です。社会生物学では今後世界的に「受ける」可能性が高いです。第一著者はすでにNatureに2報を持つ気鋭の現役ポスドク数理生物学者大槻久氏(現東工大、http://bio-math10.biology.kyushu-u.ac.jp/~ohtsuki/index.html)。

Matsuura, K., Vargo, E. L., Kawatsu,K.,  Labadie, P. E.,  Nakano, H., Yashiro, T., Tsuji, K.2009Queen succession through asexual reproduction in termites. Science.

(キャッチコピー)「私が死んでもかわりがいるもの」

(解説)次世代への遺伝子伝達効率の目安である血縁度は進化生物学者にさまざまな直感的視点を与えました。進化生物学の根本命題の1つである性に関するトレードオフも血縁度概念により解った気になれます。無性的な生殖(子の血縁度r=1)は有性生殖(子のr0.5)より2倍の遺伝子伝達効率を持ちます(有性生殖の2倍のコスト説)。しかし、無性的な生殖は子孫の遺伝的多様性を奪うため、常時変化する環境に適応できないという問題が生じます(赤の女王説)。また社会性昆虫では同じコロニーに住むワーカーの間の遺伝的多様性の高さがコロニーの繁殖や生存に重要ではないかと議論されています。ミツバチやグンタイアリなどの女王の乱婚の適応的意義もこれだと想像されています。その一方で低い血縁度?これは遺伝的多様性の高さと表裏一体で、コロニー内の遺伝的多様性が高いことはコロニー内の血縁度の低さであると考えてもおおむね間違いではありませんーは血縁選択理論によれば社会の存続をも危うくします。ヤマトシロアリにはともすれば相容れないこれらの問題をすべて解決できる、性と無性の使い分けが進化していることを本研究で突き止めました。創設女王は死後コロニーを引き継ぎ拡張する補充女王にするための自身の「クローン」をあらかじめ残し、一方で、ワーカーを作るときと巣から飛び立ち新たな環境で新巣をつくる翅アリの生産には有性生殖による王との子を残していたのです。従来は補充女王は王の娘と考えられて来ましたが、これでは近親交配による遺伝的劣化を被ります。補充女王が女王クロ?ンであればそんな問題はありません。論文では触れていませんが、この方法で性比に関する学問上全く新しい社会内の潜在的対立も回避できます。アリで近年報告されている類似の現象(Pearcy et al. 2004 Scienceなど)とともに、この研究成果は性に関する理論上のトレードオフ(短期的遺伝子伝達効率vs.多様性による長期利益)が実在することの強い証拠です。また、社会性昆虫が性の進化という基本命題を解明するための良い材料であることも示しています。第一著者は近年各種学会賞を総なめにした若手昆虫学者ナンバー1の松浦健二氏(元琉大ポスドク、現岡山大学准教授、http://www.agr.okayama-u.ac.jp/LIPM/matsuura/japanese%20page.html

 

辻 和希 (2006),第2章:血縁淘汰・包括適応度と社会性の進化. pp.55-120. 石川統,斉藤成也,佐藤矩行,長谷川眞理子 編集、 シリーズ進化学6 行動・生態の進化, 岩波書店,東京。

(キャッチコピー)「マリコさんに頼まれたならしかたないー利他行動を研究したいのならまずお読みなさい」

(解説) 今世紀に入り、あえて日本語テキストの執筆依頼は断るようにしていますが、類書のあまりの少なさに重い腰をあげて書いたのがこれです。利他行動の進化に関する現在日本語で読める唯一、新しく、体系的なテキストです。わかりやすく丁寧にかつ簡潔に書いたつもりです。そのあたりを評価してくださる読者もいるようで本当にありがたいです(たとえば以下はAmazonのカスタマーレヴューhttp://www.amazon.co.jp/review/product/4000069268/ref=dp_top_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&sh
owViewpoints=1
。私がいまこのHPの論文解説で度々使っている専門用語の意味を理解したい方にもお薦めです。

2. 外来アリの応用進化群集生態学

上記の純粋学問的なテーマに加え、「役に立つ」アリの研究も進めています。いま、外来生物による生態系、生物多様性や人間生活への被害が世界中で深刻化していますが、とりわけアリによる被害は甚大です。すでに日本には、国際自然保護連合(IUCN)の世界のブラックリスト100種のひとつにあげられているアルゼンチンアリが侵入し各地で猛威をふるっています。さらに、もっと恐い有毒のヒアリの国内侵入も秒読み段階であるといわれています。これら侵略的な外来アリの大半が熱帯?亜熱帯起源ですが、地球温暖化が危惧される中、沖縄はアリに限らず外来生物侵入の最前線です。その一方で、アリは熱帯地域では害虫の天敵として農業上利用されていますが、日本ではまだ実績がありません。熱帯?亜熱帯でとくに重要なこれら諸問題に科学的に対処するため、生態学、進化生物学、生理学、生化学、遺伝学の基礎知識を結集させ研究を行っています。

このテーマの最近の主要成果

Tsuji, K. , Tsuji, N. 1996) Evolution of life history strategies in ants: variation in queen number and mode of colony founding.  Oikos 76 (1) 83-92.

(キャッチコピー)「著者たちにもモデルにも血縁がない」

(解説)最近というにはいささか古くなったこの論文は次のNakamaru et al. (2007)を展開する発端となった研究です。外来アリに多い多女王性は女王乱婚と同様にコロニー内の血縁度を下げるため、その存在は血縁選択理論上の問題です。当時、多女王性が進化する仕組みは平衡個体群(個体群サイズが常に一定)を仮定した繁殖の偏りモデル(血縁度と繁殖成功度の積である包括適応度を目的変数にしたゲームモデル)で説明されていました。しかし、とくに多年性で齢構造を持つアリではこれらモデルの仮定がはたして適切かは少なくとも私には大いな疑問でした。そこで、私たちは考え方によってはよりシンプルな生活史戦略モデルによる解析を行いました。その結果、多女王性アリには世代時間の短縮につながる分巣繁殖(新女王は生まれた巣に留まりそこで交尾し、新巣は一部の女王とワーカーが徒歩で引っ越しすることでできる現象で、はじめからワーカーがいるため新コロニーは早く成熟する)するものが多いため、内的自然増加率が高く、個体群サイズの変動を伴う環境では多女王性が単女王性より適応的である可能性を示唆しました。個体群生態学者には割とすんなり受け入れられる「常識的」な本説ですが、残念ながらながらアリ学者の間ではほとんど引用されずいまだほぼ無視され続けています。モデル化と計算をほぼ全面的に担当した第二著者は辻宣行氏(現北大特任准教授)です。

Nakamaru, M., Beppu, Y., Tsuji, K. (2007) Does disturbance favor dispersal? An analysis of ant migration using the colony-based lattice model. Journal of Theoretical Biology 248(2)288-300 (doi: 10.1016/j.jtbi.2007.05.012)

(キャッチコピー)「アリ、クローナル植物、サンゴは心の目で見れば同じである」

(解説):なぜ一部のアリが侵略的になるのかには諸説がありますが、既存の学説(ボトルネック説、遺伝的浄化説など)はすべて平衡群集?ニッチモデルに基づいた説明です。これらは外来アリの融合コロニー性(多女王多巣性、分巣で増えコロニー間の敵対性が欠如)をある程度説明します。しかし外来アリが一般にヒトが手を加えた環境を好む撹乱環境依存種であることをうまく説明しません。そこで、本論文では非平衡群集観に立つ全く新しい理論を提出しました。注目したのはアリ、クローナル植物やサンゴに共通する子孫のサイズと移動分散距離の間のトレードオフです。たとえば分巣で繁殖する種では、子孫コロニーの生存率や成長速度は高いものの飛ばないため移動距離は限られます、一方翅アリによる独立創設で増えるアリは長距離移動により血縁者間の競争を回避できる反面、子孫コロニーは初期の高い死亡率と遅い成長を被るでしょう。本研究ではコロニーベース格子モデルという新規な方法を使い、侵略的外来アリの生活史特性を一度に説明する一般論を展開しました。計算の結果、小規模の撹乱が高頻度に起こる環境では「大きな子孫を近くに残す」やりかた有利であることがわかりました。この学説は一般になぜ外来アリ種の多くが撹乱環境を好むのか説明する現在唯一のものであると同時に、多年性のハチに分巣繁殖する種がなぜ多いのかという現象ついても初めて理論的説明を与えました。またこの論文の論文には明記されていない隠れた意義は外来アリの殺虫剤による防除の根本的な問題点の指摘です。やはりいまだ引用率は低いですが、モデル第2弾3弾と実証研究を準備中です。主著者は進化社会学?進化心理学の理論研究の第一人者である中丸麻由子氏(現東工大准教授、http://www.valdes.titech.ac.jp/~nakamaru/nakamaru_jp.html


. 社会生理学

個体としては非力なアリやミツバチが集団全体として驚異的な能力を発揮するのはなぜでしょう。社会生理学(sociophysiology)という分野は、この問いに答えるべく、個体と集団の間に存在する力学的メカニズム(行動生態学の用語でいう至近要因)の解明を目指しています。この分野のキーワードには自律分散、自己組織化、創発がありますが、これらはあわせて平たくいうと、個々の個体は出会うローカルな状況に単純なルールに従い機械的に反応しながらも、社会全体としてはきわめて柔軟かつ適応的な機能が発現されるというものです。この分野の成果は、独立モジュールが共同で働く群ロボットを制御し得るアルゴリズムの開発や、混雑時の群衆や乗物の誘導法の提案などに応用可能と考えられています。実際、私自身も工学分野の研究者と共同で、コンピュータシミュレーションやアリ?ロボットを用いた研究を行っています。

このテーマでの最近の成果

Tsuji, K., Egashira, K., Holldober, B. 1999 Regulation of worker reproduction by direct physical contact in the ant Diacamma sp. from Japan. Animal Behaviour 58 (2): 337-343.

(キャッチコピー)「触ってください」

(解説):だいぶ古くなりましたがこの論文では、アリではその存在が疑問視されることさえあったワーカーの卵巣発達を抑制する女王情報(いわゆる女王フェロモン)が、女王/ワーカー間の直接接触でしか伝達されない刺激であることを、沖縄にいるトゲオオハリアリで明らかにました。そうなるまで時間がかかりましたが、とくに国外で徐々に引用され始めています。

Kikuchi, T., Nakagawa, T., Tsuji, K. (2008) Changes in relative importance of multiple social regulatory forces with colony size in the ant Diacamma sp. from Japan. Animal Behaviour 766):2069-2077.

(キャッチコピー)「アリは巣仲間の数を知っている」

(解説):Tsuji et al.(1999)を発展させ、直接接触を必要とするトゲオオハリアリの女王情報伝達効率が、コロニーサイズにどう影響されるのかを詳しく調べました。女王はコロニーが大きくなると巣内パトロールの努力を増やし接触頻度の維持に努めること(従って,女王はコロニーサイズを「知っている!」)、しかしこれだけではワーカー産卵を抑制するには不十分で、比較的大きなコロニーではワーカー間の相互繁殖妨害(ポリシングと順位行動)がワーカーの利己的産卵を抑える別の手段である可能性を示唆しました。この研究は、現在進めているアリがあたかもコロニーサイズを認識しているかのように行動するのはなぜかを説明するしくみの研究に直接活かされています。第一著者は一見強面ですが実は優しいパパの菊地友則氏(現学振特別研究員RPD、琉大、研究室のメンバーを参照)

.チョウ類の進化生態学

熱帯のチョウは美しい。しかし美の陰にはトゲがある。アリの研究を始める前の私はそんなチョウに惹かれていました。卒論の材料もヒメジャノメというイネの害虫チョウでした。ヒメジャノメはどちらかといえば地味な色彩の種ですが、チョウの魅力はなんといってもその美しい色彩です。最も印象的だったのは小学校の頃図書館で見た当時はまだ「外国」だった沖縄のチョウの美しい形態でした。人生の不思議。今、そんな沖縄で職を得たからにはチョウの研究をしない手はありません。チョウの形態の多様性がどんな仕組みで進化したのか、島という環境の研究上の有利さを活かし、擬態、捕食、密度、移動、遺伝、病原体をキーワードに研究を展開しています。これまで扱った材料は害虫のシロオビアゲハとウスキシロチョウですが、いずれオオゴマダラやコノハチョウのような保護対象や観光資源にもなる希少種も研究材料にしたいと考えています。


このテーマの最近の成果

まだ国内学会発表程度の実績しかありませんが、以下2つはそれなりの成功例です。

間朝宜、辻 和希: 「ウスキシロチョウにおける翅型決定要因と密度効果」、2008317日、第55回日本生態学会大会(福岡国際会議場)、優秀ポスター賞

畑野 俊貴、辻 和希「シロオビアゲハにおけるベイツ型擬態と性淘汰のコスト」、2007319-23日、第54回日本生態学会大会(松山大会/愛媛大学)、最優秀ポスター賞 


5.その他のテーマ

ほとんどが正規の論文になっていないので書くのもおこがましいのですが、過去にはクワガタ、カブトムシ、ハムシ、テントウムシ、アブラムシ、カメムシなどを材料に学生さんに学位テーマ(おもに卒論と修論)を出しました。学生さんから提案されたテーマとしては、ホタル、ゴミムシ、昆虫以外ではショウジョウバカマ(日本本土に自生する草本植物)、リュウキュウヤマガメ、ウミガメとそれに寄生するフジツボ類を対象にした卒論?修論研究などをサポートしました。詳しくは琉大昆虫学研究室の学生の最近のテーマを参照ください。

このカテゴリーの最近の成果

Morinaga, S.-I., Tsuji, K., Sakai, S. 2003Consequences of differences in flowering date in seed production in Heloniopsis orientalis (Liliaceae).American Journal of Botany 90(8):1153-1158.

(解説):春植物ショウジョウバカマの個体毎のフェノロジーと受粉率、自殖率の関係を調べました。DNAマーカーを用いた調査によれば、後期に開花する花ほど他殖率が高く、これは媒介昆虫相の時間的な変動が原因である可能性が示唆されました。第一著者は知る人ぞ知る植物進化生物学の若手超hope森長真一氏(現九大学振PDhttp://d.hatena.ne.jp/simorinaga/、実は富山大学時代の私の卒論指導生)、3著者は「これ論」で超有名な酒井聡樹氏(東北大准教授)。

Hayashi, R., Tsuji, K. 2008) Spatial distribution of turtle barnacles on the green sea turtle, Chelonia mydas. Ecological Research 231):121-125.

(解説):絶滅危惧種アオウミガメの体表に寄生する各種フジツボ類の分布パターンを独立集中分布モデルやニッチ理論の観点から分析するとともに、フジツボからウミガメの未知の生活ステージの謎に迫れる可能性も示しました。第一著者の林亮太氏(現千葉大博士課程院生で、元東大修士、その前は琉大での私の最初の卒論指導生)。当時は嫌々フジツボを扱っていたが今や寄生性フジツボ分類の世界的第一人者。


全業績リスト(※辻 和希 Tsuji, Kazuki は辻 瑞樹 Tsuji, Mizukiのペンネーム)

日本語著書および翻訳書

 

1.辻 和希 (1992) アリにおける共同社会の進化と維持、伊藤嘉昭(監修)「動物社会における共同と攻撃」、第2章、53-110、東海大学出版会(共著)

 

2.辻 和希 (1993) 社会性膜翅目の性比の理論、松本忠夫、東正剛(監修)「社会性昆虫の進化生態学」、第5章、146-205、海ゆう舎、(共著)

3.B.ヘルドブラー、E,.O ウイルソン(著)、辻 和希,松本忠夫(共訳)「蟻の自然誌」朝日新聞社、1997年(原著:B. Holldobler , E. O. Wilson, Journey to the Ants, Harvard University Press 1994 p.224

4. 辻 和希,愚鈍な生態学者の肖像、426-43、井上民二追悼集刊行委員会編「Terra Incognita 未知なる大地をめざして - 追悼 井上民二」、井上民二追悼集刊行委員会、1999年(共著)

5. 辻 和希、進化生態学p.158-159、社会性昆虫p.226-227、本間保男ら編、「植物保護の辞典」、520頁,朝倉書店、997.(共著)

6. 辻 和希、超個体」231-235「複雑系の事典」編集委員会編、「複雑系の事典」,433頁,朝倉書店,2001年(共著)

7. 辻 和希、群淘汰p133-134、血縁淘汰p143-144、巌佐庸他編集、「生態学事典」、共立出版2003年(共著)

8. 辻 和希、第2章血縁淘汰包括適応度および社会性の進化、 p143-144、長谷川眞理子(監修)、「シリーズ進化学6:行動?生態の進化」(2006)(共著)

9. 辻 和希、7.-3.アリ類に見られる社会性、p.98-102, 石川良輔編、「バイオディバーシティシリーズ6節足動物の多様性と系統」 495頁、裳華房20084月(共著)

10. 辻 和希、社会性昆虫における相互監視, 社会的免疫とモラルの進化、p.921-927、下澤楯夫・針山孝彦編「昆虫のミメティックス?昆虫の設計に学ぶ?」、949頁+索引、NTS 2008年(共著)


原著論文?英文総説?英文評論

1. Tsuji, K., Ito, Y. (1986) Territoriality in a queenless ant, Pristomyrmex pungens (Hymenoptera, Myrmicinae). Applied Entomology and Zoology 21: 377-381.

2. Tsuji, K. (1988) Obligate parthenogenesis and reproductive division of labor in the Japanese queenless ant Pristomyrmex pungens: comparison of intranidal and extranidal workers. Behavioral Ecology and Sociobiology 23: 247-255.

3. Tsuji, K. (1988) Inter-colonial incompatibility and aggressive interactions in Pristomyrmex pungens (Hymenoptera: Formicidae). Journal of Ethology 6: 77-81.

4. Tsuji, K. (1988) Nest relocations in the Japanese queenless ant Pristomyrmex pungens Mayr (Hymenoptera: Formicidae). Insectes Sociaux 35: 321-340.

5. Tsuji, K. (1990) Reproductive division of labour related to age in the Japanese queenless ant Pristomyrmex pungens. Animal Behaviour 39: 843-849.

6. Tsuji, K. (1990) Nutrient storage in the major workers of Pheidole ryukyuensis (Hymenoptera, Formicidae). Applied Entomology and Zoology 25: 283-288.

7. Tsuji, K. (1990) Kin recognition in Pristomyrmex pungens (Hymenoptera: Formicidae): asymmetrical change in acceptance and rejection due to odour transfer. Animal Behaviour 40: 306-312.

8. Tsuji, K., Furukawa, T., Kinomura, K., Takamine, H., Yamauchi, K. (1991) The caste system of the dolichoderine ant Technomyrmex albipes (Hymenoptera: Formicidae): morphological description of queens, workers and reproductively active intercastes. Insectes Sociaux 39: 413-422.

9. Yamauchi, K., Furukawa, T., Kinomura, K., Takamine, H., Tsuji, K. (1991) Secondary polygyny by inbred wingless sexuals in the dolichoderine ant Technomyrmex albipes. Behavioral Ecology and Sociobiology 29: 313-319.

10. Tsuji, K. (1992) Sterility for life: applying the concept of eusociality. Animal Behaviour 44: 572-573.

11. Peeters, C., Tsuji, K. (1993) Reproductive conflict among ant workers in Diacamma sp. from Japan: dominance and egg cannibalism in the absence of the gamergate. Insectes Sociaux 40: 119-136.

12. Yamauchi, K. Kinomura, K., Corbara, B., Tsuji, K. (1993) Dommes preliminaries sur le comportment agonistique at reproductieur des deux castes de males ergatoides de la fourmi Hypoponera bondroiti Forel (Ponerinae). Actes Coll Insectes Sociaux 8: 173-177. (レフェリーなし)

13. Tsuji, K., Yamauchi, K. (1994) Colony level sex allocation in a polygynous and polydomous ant. Behavioral Ecology and Sociobiology 34: 157-167.

14. Tsuji, K. (1994) Inter-colonial selection for the maintenance of cooperative breeding in the ant Pristomyrmex pungens: a laboratory experiment. Behavioral Ecology and Sociobiology 35: 109-113.

15. Tsuji, K., Yamauchi, K. (1995) Production of females by parthenogenesis in the ant, Cerapachys biroi. Insectes Sociaux 42: 333-336.

16. Tsuji. K. (1995) Reproductive conflicts and levels of selection in the parthenogenetic ant, Pristomyrmex pungens: contextual analysis and partitioning of covariance. The American Naturalist 146: 586-607.

17. Ito, Y., Tanaka, S., Yukawa, J., Tsuji, K. (1995) Factors affecting ratio of soldiers in eusocial bamboo aphid, Pseudoregma bambucicola, colonies. Ecology Ethology and Evolution 7: 335-345.

18. Heize, J., Tsuji, K. (1995) Ant reproductive strategies. Researches on Population Ecology 37: 135-149.

19. Yamauchi, K., Kinomura, K., Corbara, B., Kinomura, K. Tsuji, K. (1996) Dimorphic ergatoid males and their reproductive behaviour in the ponerine ant Hypoponera bondroiti. Insectes Sociaux 43119-130.

20. Tsuji, K. , Tsuji, N. (1996) Evolution of life history strategies in ants: variation in queen number and mode of colony founding. Oikos 76: 83-92.

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日本語の総説、翻訳など(学会のニューズレターや新聞等のコラムなどの雑文は除外)

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2.辻 和希 (1988) 「女王のいないアリ-アミメアリの特異な生活史」インセクタリウム198810月号:312-318. 3.辻 和希 (1992)「昆虫社会学の理論的諸問題1」昆虫と自然1992年5月号:34-37.

4.辻 和希 (1992)「昆虫社会学の理論的諸問題2」昆虫と自然1992年6月号:26-30.

5.辻 和希 (1992) 「女王の数は何で決まるか」インセクタリウム199211月号: 46-53.

6.辻 和希 (1992) 「女王アリとはなにか」週間百科第81号:274、朝日新聞社

7.辻 和希 (1993) 「アミメアリの進化生態学」SHINKA32月号:63-68.

8.辻 和希 (1994) 「集団構造下における表現型選択測定入門」個体群生態学会会報51号:29-38.

9.辻 和希(1996)「ヴュルツブルク留学日記(1)」蟻 20号: 30-40

10.辻 和希(1997)「社会性昆虫学」アエラムック18、動物学がわかる:46-47

11.辻 和希(1997)「ヴュルツブルク留学日記(2)」蟻 21号:9-17

12.辻 和希,伊藤文紀,大河原恭介(1997)「インドネシアおよびマレーシア産のアミメアリ属3種の採餌行動とコロニー構成に関する予備的報告」蟻 21号:4-7.

13.辻 和希(1997)「植物と昆虫のインターラクション-日本における群集生態学の展望-」生物科学 第49巻3号:121-124.

14.辻 和希(1997)「特集・昆虫の配偶行動の最近の話題、社会性昆虫-アリやハチでは雌と雄の資質が逆転する?」昆虫と自然、第332号:26-31.

15.辻 和希(1998)「特集・今を生きるダーウィン、ダーウィンを悩ませた社会性昆虫」科学 第6812号:959-969.

16.辻 和希(1999)「特集・兵隊アブラムシをめぐる諸問題(I)、真社会性動物発見ラッシュの後で」生物科学511号:1-9

17.辻 和希(1999)「赤の女王蜂-昆虫の社会進化と病気-」個体群生態学会会報 第56巻:13-20.

18.辻 和希、劉 志斌(1999)「特集・社会性昆虫における認識機構とカースト分化機構、アリのコロニーおよび血縁認識システム」日本生態学会誌 第49巻2号:193-200.

19.辻 和希(1999)「書評, T. D. シーリー:ミツバチの知恵・ミツバチのコロニーの社会生理学」生物科学 第514: 253-255.

20. 辻 和希(1999) 「進化生態学が解明を目指す一般性とは?」 SHINKA 第9巻:7-16.

21.辻 和希(2000)「「裏切り者」を監視する社会の免疫機構-アリにおける階層性とポリシング」遺伝第54巻1号:72-76.

22.辻 和希(2000)書評「ミクロの社会生物学 ダニから動物社会を考える」生物科学52巻3号:185

23.辻 和希(2000)書評「進化と人間行動」生物科学524:251.

24.辻 和希(2001)書評「虫を愛し、虫に愛された人 理論生物学者W. ハミルトン」遺伝第555107

25. 辻 和希 「粘菌などに見られる利他行動-動物とのアナロジー」別冊遺伝,No.1676-85, 2003