現在行っている研究
現在研究室で進めている研究です。卒業研究のテーマになっています。
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K. Mekaru, T. Miyagi, A. Mishima, I. Uehara, R. Ohmura, K. Yasuda,
J. Chem. Thermodyn., 2024, 189, 107185 -
M. Maruyama, S. Tomura, K. Yasuda, R. Ohmura,
J. Clean Prod., 2023, 385, 135425 -
A. Gibo, S. Nakao, S. Shiraishi, S. Takeya, S. Tomura, R. Ohmura, K. Yasuda,
Desalination, 2022, 539, 115937 -
K. Kamochi, A. Tripathi, M. Taoka, R. Ohmura, K. Yasuda,
J. Chem. Thermodyn., 2022, 175, 106886 -
M. Tanaka, K. Tsugane, D. Suga, S. Tomura, R. Ohmura, K. Yasuda,
ACS Sustainable Chem. Eng., 2021, 9, 9078–9084 -
R. Nakane, Y. Shimosato, E. Gima, R. Ohmura, I. Senaha, K. Yasuda,
J. Chem. Thermodyn., 2021, 152, 106276 -
R. Nakane, E. Gima, R. Ohmura, I. Senaha, K. Yasuda,
J. Chem. Thermodyn., 2019, 130, 192–197
海水淡水化/製塩
世界的な人口増加や産業の発展にともなって水不足が深刻化しています。中東や北アフリカといった地域ではこの問題が顕著です。沖縄県でも、とくに離島地域では水不足に陥ることが多くあります。よって地球上の水の97.5 %を占める海水を淡水化する技術開発が長く行われてきました。
ハイドレートは「結晶構造に塩分を取り込まない」という性質があるため、海水淡水化に使用可能であることが分かっています。私たちの研究室では、ハイドレートの生成・分解によって海水を淡水と食塩とに分離して、海水淡水化と製塩を同時に行う技術開発を行っています。2つの技術の運用を同時に行うことでエネルギーの面でも経済性の面でもメリットがあると見込まれます。
この海水淡水化/製塩技術は世界に通用する技術でもあり、離島地域における淡水不足の解消と産業としての製塩の効率向上という地域課題の解決に寄与する技術でもあります。
リチウム濃縮
スマートフォンから電気自動車まで、高性能なバッテリーとしてリチウムイオンバッテリーが使用されその使用量は年々増加しています。使用されるリチウムについても需要が増加していて、その供給量の確保やリサイクル技術の開発が進められています。このとき、リチウムは水に溶けやすい性質を持っていますので効率的な供給やリサイクルのためには水溶液中のリチウムを濃縮することが必要です。
リチウムは海水中の塩分と同じようにハイドレートに取り込まれないという性質があります。そのため、リチウムを含む水溶液とゲストを反応させてハイドレートを生成し、残っている水溶液を回収することでリチウムの高濃度化が可能です。
私たちの研究室ではリチウムを含む水溶液からハイドレートを生成したときの生成条件の測定や実際に濃縮された溶液の解析を行うことでハイドレートを利用したリチウム濃縮技術の開発を行っています。
二酸化炭素分離回収
カーボンニュートラル社会の実現に向けて再生可能エネルギーの利用が押し進められていますが、依然として化石燃料が人類のエネルギー源として広く利用されています。化石燃料の消費により生じる二酸化炭素を回収して貯留することができると大気への排出を抑えて地球温暖化への影響を下げることができます。
ハイドレートは「混合ガスから生成すると特定の成分を優先的に取り込む」という性質があり、排ガスと水とを反応させてハイドレートを生成してから回収して分解すると二酸化炭素濃度の高いガスが得られます。こうして得られたガスを貯留することで大気中への二酸化炭素排出を減らすことができます。この技術は海岸沿いにあり、水を多く必要とする工業地帯が併設することが多い火力発電所や製鉄所といった大規模な二酸化炭素排出源での活躍が期待できます。私たちは二酸化炭素分離と海水淡水化を組み合わせた技術について研究しています。
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H. Ito, A. Gibo, S. Shiraishi, K. Yasuda, R. Ohmura,
Int. J. Thermophys., 2023, 44, 128 -
H.D. Nagashima, T. Miyagi, K. Yasuda, R. Ohmura,
Fluid Phase Equilib., 2020, 517, 112610 -
S. Takeya, S. Alavi, S. Hashimoto, K. Yasuda, Y. Yamauchi, R. Ohmura,
J. Phys. Chem. C, 2018, 122, 18134–18141 -
Y. Nema, R. Ohmura, I. Senaha, K. Yasuda,
Fluid Phase Equilib., 2017, 441, 49–53
クラスレートハイドレートの物理化学/熱力学
ゲストの多くは水に溶けにくいため、ハイドレートの生成・分解は気体と液体、固体が混ざりあって複数の成分が反応するという複雑な状態で起こります。そのため、ハイドレート生成系で起こる現象を理解するためには多相多成分系における物理化学や熱力学の理解が必要です。物理化学の側面から、ハイドレート中の分子の配列がゲストによってどのように変わるかという情報がハイドレートの物性を決める要因になります。また、熱力学の導入によりハイドレートが生成・分解する条件という実験的に明らかになる情報と理論とを結び付けることができます。
本研究室では、ハイドレートの物理化学や熱力学を理解するための研究を進めています。基礎科学といえますが、こうした研究を進め続けることで将来的にハイドレート関連技術がさらに広がっていくと期待しています。
学生実験の開発
エネルギー環境工学実験I(2年次後期・必修)・II(3年次前期・必修)でハイドレートを利用した学生実験を提供しています。テーマは2年ごとに更新しています。
これまでにTBABハイドレートの結晶成長観察実験(2018年度後期から2021年度前期)、二酸化炭素ハイドレートの生成実験(2021年度後期から2022年度前期)、ハイドレートを使用した二酸化炭素分離実験(2022年度後期から)を行ってきました。
ハイドレートはエネルギーや環境に関わる多くの技術での利用に向けて研究開発がされていて、なおかつ大学の講義1コマに相当する90分程度で十分に生成することが可能です。水はもちろんのこと、ゲストも身近な物質が多いので用意することが難しくありません。これらのことから、ハイドレートはこれからの時代の学生実験のテーマに相応しいものであると考えています。すでに学術論文化したTBABハイドレートの結晶成長観察実験について、実際に使用したテキストを公開します。