石田 肇  木村 亮介  泉水 奏  藤本真悟

 研究概要 藤本 真悟

1. メダカ科魚類の多様化メカニズムの解明
2. 非破壊的な理化学分析による南琉球の土器の元素組成分析
3. 集団ゲノミクスによるメダカ野生集団に働く淘汰メカニズムの分析

1. メダカ科魚類の多様化メカニズムの解明(藤本真吾)

時空間ゲノミクスに関する研究支援として, 熱生研西原施設の山平寿智博士らとの共同研究を行った。

インドネシア・スラウェシ島に分布する固有のメダカ属魚類の全ゲノムシーケンスデータを用いて, 集団遺伝構造と過去の集団サイズ動態を検討した。

Admixture graphを用いた解析結果から, 多くの種が過去に二次的接触後の遺伝的交雑を経験しながら現生集団に分岐してきたことが明らかになってきた。

今後は, これら交雑イベントが種分化や形質進化に対して, どのように関与したか検討していく必要がある。

これら共同研究に関連する成果として, メダカ科魚類における性的二型の緯度間変異に関する論文2篇を責任著者として出版した。

この論文では, メダカ科魚類32種を用いて, 体サイズや性差を示す鰭長といった性的二型の程度が緯度と相関するか検討した。 遺伝的距離が異なる種間比較では, 系統樹上の距離を考慮して相関を検討する必要がある。 Phylogenetic generalized least square(PGLS)を用いて系統の効果を補正して解析した。


2. 非破壊的な理化学分析による南琉球の土器の元素組成分析(藤本真吾)

琉球列島の土器の元素成分分析に関する研究論文1篇を戦略的研究プロジェクトセンターの山極海嗣博士らとの共同研究として出版した。

この論文では, 主としてデータ分析および統計解析を担当した。 戻る↑


3. 集団ゲノミクスによるメダカ野生集団に働く淘汰メカニズムの分析(藤本真吾)

受入研究費による研究課題として, 科研費・若手研究で日本のメダカ野生集団 (Oryzias latipes,O. sakaizumii)について集団ゲノミクスに基づく解析を行うためのデータ整備を進めた。

西日本と東日本の日本海側を主として野生個体のサンプリングを行い, 19集団77個体の全ゲノムリシーケンス解析を行って, ゲノムワイドなSNPsカタログを取得した。

これらデータを用いて, 1.集団遺伝構造と過去の有効集団サイズ変動の推定, 2.生活史の気候適応と関連する遺伝領域の探索, 3.Oryzias latipes 種内で進化した新規な性決定遺伝子の分子メカニズムの解析, といった点について解析を進めている。

2020年は主として, 野生集団間に見られる生活史特性の変異について, 表現型の差異が知られるO. latipesとO.sakaizumiiの野生集団で交配家系を作出して, F2個体を用いて量的形質遺伝子座(QTL)解析を行った。

配偶行動, 産卵数や体サイズといった生活史に関わる, いくつかの表現型で候補領域が得られたので, これら表現型の遺伝基盤に関わる研究結果をまとめて口頭発表を行った。 戻る↑