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 平成28年4月より、琉球大学皮膚科の教授として診療・教育・研究を担っております高橋健造です。琉球大学医学部の開設時の初代教授である 名嘉真 武男先生から、野中 薫雄先生、上里 博先生と、沖縄県出身者と県外出身者が交互に教室主任となり、私で4代目となります。
私自身は北海道出身で、札幌南高校を卒業後、京都大学医学部に入学し皮膚科研修の後、基礎医学教室の中西重忠教授の下、分子生物学的手法や思考法を学びました。4年間の米国ジョンス・ホプキンス大学での留学中や群馬大学と京都大学、そして平成22年より上里 博前教授の下で琉球大学の准教授として、皮膚科医としての大部分を、大学の医師として勤務して参りました。
 現在の琉球大学の皮膚科教室は、皮膚腫瘍を対象とする皮膚外科グループと、膠原病・アレルギーグループがうまく融合し機能しており、私がこれまでに勤務してきた県外の大学病院よりも高度で果敢で責任を持った治療を行えていると自負しております。琉球大学のように地方色の強い大学病院の皮膚科学講座が達成すべき臨床の目標として、次代の人材の育成、地域の最終基幹病院としての使命、さらには高度先進医療施設としてのチャレンジなどが挙げられます。医学部と病院全体の移転を数年後に控え、国際性豊かな医学部をめざし、今後、皮膚科教室からもひとりでも多くの若手医師に国外留学の機会を与え、国際的に発信し続ける皮膚科医・皮膚科学研究者を育てていきたいと思います。

皮膚科へ入局した修練医・医員への卒後教育としては、皮膚疾患全般の知識、入院患者の全人的なとらえ方、診断確定のための皮膚病理の読み方、現在の皮膚科学で何が限界か、次に何にチャレンジすべきかなど含めた総合的な教育や問いかけとともに、将来の臨床研究や基礎研究の足がかりとなるよう、自分の頭で考えてまとめ上げられるよう指導しています。
 沖縄県は従来、救急医療研修が盛んに行われた土地柄もあってか、若い医師のフットワークは軽く、経験不足の症例に対しても果敢にこなしていく姿勢は良い点だと思います。しかし昨今の忙しい医療環境もあってか、1人の症例を継続して深く考察する姿勢が、希薄であるように感じられます。自分の頭で1人の患者さんを深く観察し続け、考える、全ての患者・症例は何某かの点では典型ではない、その点に気付けるように、若い研修時期に自分で考える習慣が大事だと感じます。
扱う皮膚疾患の重篤度に差はあるにしても、大学病院、地域の基幹病院、クリニックと働く場は変化しても、生涯を通じて自分の専門性は損なわず、自負心をもって、知的な楽しみを維持しながら皮膚科医として働き続けられるように指導することも、同じ専門を目指す先輩医師の務めの1つであると考えています。

 琉球大学医学部は、現在でも最も新しい国立大学の医学部であり、その歴史的成り立ちからも、大学内や県内医療圏において、いわゆる学閥、出身大学グループ、狭い仲間意識が存在しません。私自身も北海道出身で、京都大学、群馬大学と勤務してきた経験がありますし、学内の臨床診療科や基礎医学教室のいずれも、多彩な地域、大学や大学院出身者の集合体です。沖縄という環境もあってか、皮膚科教室を含め、琉球大学医学部全体が非常にオープンで自由な雰囲気のキャンパスであり職場です。
これも東南アジアに位置する琉球大学の環境のおかげか、医局の医師のほぼ半数を占める女性医師も、結婚、出産、特に沖縄の大家族のことですので、3人以上のお子さんを育てつつ、立派に大学での研究や、専門性を持った皮膚科診療を続けている女性皮膚科医も多数おります。彼女達先輩女性医師は、きっと立派なキャリアモデルやロールモデルになってくれると思います。県内出身者はもとより、人生の一時期を南国のゆったりとした時間が流れる沖縄で過ごし働いてみたいと考える皮膚科医も、出身大学や男女問わずに、各々の立場として歓迎いたします。

 琉球大学へ着任するまでの私の研究テーマは、主に進化の過程での多様な表皮機能の獲得プロセス、多数のケラチン蛋白の存在意義、創傷治癒過程での表皮の脱分化メカニズム、先天性角化症の治療薬の開発など、表皮角化細胞に関する研究課題であります。
創傷治癒に関する興味は、現在では琉球大学本学の霊長類学者との共同により、ケニア国立霊長類研究所でのアヌビスヒヒやサイクスモンキーなどの霊長類や、ヒト型皮膚のモデルである県内種アグーブタを用いての解析へと繋がっております。霊長類を含めた哺乳類各種の中で、ヒトのみが皮膚の創傷治癒が著しく遅延したミュータント動物であり、創収縮能力を欠損する動物であることを見いだしました。ヒトが進化の過程で他の類人猿とは大きく異なる皮膚を獲得する一方、創傷治癒の能力を失ったのは何故なのか、霊長類研究を通した進化学・人類学的な興味であります。
現在は沖縄・琉球諸島に多発する幾つかの皮膚症の病態解明も主眼として研究しております。6年前に、琉球大学へ勤務して以来、気がつきますことには、沖縄県や近隣の諸島には地理的、歴史的、人類学的な特徴からか、当地に特徴的な幾つかの皮膚疾患が存在します。この地域に固有の皮膚疾患の疫学、病態、治療に取り組みことは、公衆衛生学的な課題であることは元より、琉球大学皮膚科独自の使命であり、ある面では学問的なチャレンジの機会であると思われます。現在、大学院生とともに、カポシ肉腫、色素性乾皮症、背部弾性線維腫、ハンセン病、血管肉腫、さらには学童に蔓延する薬剤抵抗性のアタマジラミ症などの、沖縄県の公衆衛生に寄与すべく、これらの病態解明や治療に取り組んでおります。

 

琉球大学大学院医学研究科 皮膚病態制御学講座  高橋健造

高橋健造写真

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