Column
チャイナ・タイム
2020. 11. 2.
池田 譲
「駆け抜けろ1996」というドラマを観ている。中国のとある街の高校生たちの日常を描いた作品で、アジアの複数の国で放映された。大きなストーリー展開はなく、ほぼ一話完結型のドラマだ。実は、あまり大きな期待をもって見始めた訳ではなく、日本語字幕を追いかけなければならないので当初は観続けることを躊躇した。しかし、次第に惹かれて観続けることとなった。
ドラマの中心は男女五人の高校三年生で、時に学校で、時に校外で、時に家庭でと話が進んでいく。そのような中で、当時の中国の高校生たちの日常が描かれているのが面白い。高校の授業はこのように進むのか、こういうものを家庭の食事では食べるのか、中国でも大学受験は大きなイベントなのか、など。ドラマなので、どれだけ忠実に中国の実際が描かれているかは分からないが、原作も制作も中国の方なので、おそらくはリアルな中国なのだと想像する。また、当時、中国の高校生たちの間で「ちびまる子ちゃん」や「ドラえもん」といったアニメや、山口智子に象徴されるトレンディードラマなど日本のテレビ作品が人気を博していたことが随所に描かれているのも興味深い。これはサブカルチャーの世界では常識なのかも知れないが、新鮮な驚きであった。単に私が中国の今に無知であるだけなのだろうが、隣国の高校生たちの日常をすぐにイメージすることは案外、容易ではない。もっとも、このドラマの時代背景は1996年なので、既に四半世紀前の話ということになるのだが。吹き替えなしのネイティブの中国語というのもこのドラマのもう一つの魅力である。あんなふうに中国語を話せたら。そんな気持ちにさせる。
1996年といえば、Bio-PIXEという加速器の国際学会が北京で開かれ、私は初めて中国を訪問した。天安門広場は広すぎて全景がカメラに収まらず、紫禁城は映画「ラストエンペラー」で観た通り圧倒的に大きかった。その同じ時に、受験を控えた高校生たちが中国で青春を駆け抜けていたかと思うと「いとおかし」である。
お待たせいたしました
2020. 1. 14.
川端律貴