教育・研究分野


[ 大気海洋コース ]

1.どんなことが学べるか?
地球の表面をとりまく流体としての大気や海洋の振舞いやそれらの地球環境に果たす役割について学びます。勉強の分野では「大気物理学(気象学)」、「海洋物理学」と呼ばれています。数学や物理の基礎、「流体力学」などを学び基礎学力をつけながら、4年次の卒業研究では、「亜熱帯島しょ」といった沖縄の特徴を生かした課題を含めて様々な研究に取り組んでください。また、卒業研究を通して、「レポートのまとめ方」や「発表力」もしっかり身に付けてください。



2.主な授業内容
大気・海洋物理分野では、専門科目に「気象学」、「台風物理学」、「海洋物理学」、「地球流体力学」、「気象学実験」等を開講しています。学部学生の皆さんには、物理学、物理数学、流体力学等を土台として、大気・海洋の特性を幅広く総合的に学んでもらいたいと考えています。ここでは、授業科目「台風物理学」「海洋物理学」を簡単に紹介しておきましょう。台風物理学ではなぜ台風があのような凶暴な渦となるのか、進路がどのように決まるのかなどを物理学を基礎として学びます。海洋物理学では黒潮などの大規模海流循環の基礎を学びます。海流を地衡流としてとらえることにより、海洋の水温・塩分分布や海面高度分布が海流分布とどのようにつながっているか理解できます。



図:衛星海面高度計観測資料(AVISO提供)をもとに描いた沖縄周辺の海面高度の等高線分布(等高線の間隔10cm、2005年3月下旬観測)。地衡流の関係式から、沖縄本島北西から九州、四国沖にかけて見られる等高線の密な海域が黒潮の流れに対応することが推定される。ただし、台湾東岸近くを北上する黒潮部分は、衛星高度計が大陸や大きな島近傍でうまく動作しないので表現できてない。また、沖縄本島南方に見られる渦状の分布は海洋中規模渦(じょう乱)と呼ばれるもので、安定したものではなく徐々に西方に移動していく。衛星観測資料を利用すれば、大規模海流や中規模渦の変動を逐次観察できる。

3.どんな研究をしているか?
沖縄の大気や海洋の特徴を生かした研究に取り組んでいます。大気分野では、亜熱帯海洋性気候のもとでの降水特性の研究、台風の進路研究、衛星観測資料による台風域の降雨推定などがあります。海洋分野では、沖縄近く東シナ海を流れる黒潮の流量変動の観測、海洋レーダを用いた波浪や黒潮影響下の沖縄周辺海流の研究、衛星観測資料を用いた東シナ海・黒潮海域の大気海洋間の熱供給量の推算などがあります。

下の写真は航空機から撮影された台風の眼と眼を取り囲む壁雲の様子です(2017年11月21日山田広幸准教授撮影)。琉球大学理学部地学系は他の研究機関とともに、重要拠点として様々な台風関連のプロジェクトに関わっています。T-PARCIIと呼ばれるプロジェクトでは、航空機からドロップゾンデと呼ばれる観測機器を投下し、気温・湿度・気圧・風向・風速を観測しました。これにより、台風内部の状態を精密に調べて新たな発見をすることとともに、貴重なデータを使って台風の予報の精度を上げることを目指しています。




4.最近の研究紹介
海洋レーダを用いて沖縄本島西岸域の海の流れについて調べました。海洋レーダとは、電波を海面に照射して,散乱されてきた電波を調べることによって海の流れの速さや方向、波の高さや方向を測る装置です。この海域よりも西側(久米島の西)では黒潮が北東向きに流れていますが、この海域では南向きに流れていることがわかりました。また風によっては、この流れが強くなることがわかりました。



卒業論文のテーマ例
・衛星画像と断熱図による低気圧の雲解析
・ひまわり画像からの台風雨領域推定とその検証
・海洋数値モデルを用いた解析
・熱帯収束帯の季節・年変動と台風発生−進路の特徴
・台風内気流の動径成分
・琉球列島周辺における海上風のスペクトル解析
・沖縄本島近海における海面水温と海面熱フラックス変動
・石垣島周辺海域の海面水温変動
・海洋ブイのデータから見る風向・風速の変動

担当教員

久木 幸治(ひさき ゆきはる) 教授 専門:海洋物理学 研究室ホームページ
山田 広幸(やまだ ひろゆき) 教授 専門: 気象学 研究室ホームページ