研究分野・研究方法
われわれの分子生理学研究室では、「分子生理学」を「分子レベルを基盤として生理現象について探求する学問」と広義に捉えています。実 際には、分子レベルにとどまらず、様々な階層から生物現象を眺めることで、生物の様々な側面を探求しています。既成の分野にとらわれず、これまでにほとん ど着目されていない面白い現象の研究や革命性を持つ萌芽的研究を推奨しています。主な生物材料はチョウですが、必要性があれば、それ以外の生物を用いることもあります。具体的には、以下のようなプロジェクトを行っています。
(A)【チョウの色模様形成】
チョウの翅の色模様に関する発生、進化、分類の研究で、特に、(1) 環境要因が色模様形成、表現型、進化などに与える影響、および、(2) 翅全体の色模様を統一化するメカニズムの解明に力を注いでいます。沖縄に産するチョウを用いるのが基本です。タテハモドキ、アオタテハモドキ、アカタテハ、ヤマトシジミなどを用いています。ヤマトシジミを用いた放射線研究は、(1)の視点から行われました。また、近年、熱帯魚の色模様形成過程の研究も行いました。
(B)【蛋白質の配列暗号解読】
蛋白質はアミノ酸がつながった巨大分子で、アミノ酸の配列がその蛋白質の立体構造と機能を決定します。しかし、アミノ酸配列を「読み解く」ことが現在の人類にはできません。アミノ酸配列に含まれる暗号を解読するため、Availability (利用度) という概念を提案し、これを用い た研究を展開しています。近年は、蛋白質のアミノ酸配列を言語とみなし、英語などの自然言語との比較検討を行うことで、暗号解読を進める研究も行っています。また、Availabilityを用いた配列分析ツール(SCS Package) をwebserviceとして公開しました。
(C)【嗅神経細胞の遺伝子発現】
マウスの嗅覚系を構成する嗅神経細胞は匂いを感知する細胞です。この細胞に発現されている匂い受容体遺伝子やBCL6などの特殊な癌遺伝子の機能を解析します。過去には、嗅覚系の腫瘍に発現する遺伝子群を特定する研究も行いました。
これまでの卒業研究のテーマ
・ヒト嗅神経芽腫の免疫組織化学
・ヤマトシジミ幼虫の人工飼料開発
・ヒト・プロテオームにおける種特異的アミノ酸配列の探索
・スポッテッドマンダリンフィッシュの眼状紋の生理学的解析
など…
こういう学生に来てほしい
特に「こういう学生に来てほしい」という希望はあまりありませんが、あえて 言えば、何かの色(特徴、特技、得意技、特殊傾向など)を持っている学生を 好みます。
研究室メンバー
2016年3月時点
教員:1名
博士研究員:1名
博士後期課程:3名(内留学生1名)
博士前期課程:3名
学部生:2名