Ken + Julia Yonetani
(c)Ken+Julia Yonetani
Ken + Julia Yonetani (米谷 健+ジュリア)
Ken + Julia Yonetaniさんは、日本出身の健さんとオーストラリア出身のジュリアさんのご夫婦で活動されているアーティストユニットです。現在は、オーストラリアを中心に世界各地で幅広く活動されています。彼らの作品には、人間の活動が自然環境へもたらす影響についてのメッセージが込められており、塩や砂糖といったメッセージを象徴するような材料が用いられています。特に、2011年の東日本大震災以降は、原子力エネルギーをテーマにウランガラスを材料に用いた作品も制作されています。また、材料だけでなく、原住民のドリーミング(神話)や科学的な知見からインスピレーションを受けた作品もあり、これまでにもシドニー大学などと共同で作品制作を行っています。
彼らのホームページでは、ウランガラスを材料に用いた作品"Electric Dreams"(2012)、 "What the Birds Knew"(2012)、"Crystal Palace: The Great Exhibition of the Works of Industry of all Nuclear Nations"(2013)などこれまでの作品の写真を見ることができます。
コラボレーション作品 "Three Wishes (3つの願い)"
ディズニー映画『わが友、原子力』の中で、ナレーターである科学者ハインツ・ハーバー氏は次のように問いかけました。
“我々は、原子炉とコントロールされた安全の下に、原子力というランプの魔人ジーニーを抱えることになった。彼は、我々に招かれて、外の世界へとやってきたのだ。そして、彼は我々に3つの願いを叶えると約束してくれた。その決断は我々に委ねられている。我々は何を望むべきなのだろうか。我々に最も必要なものとは何なのだろうか。”
『わが友、原子力』は1956年に書籍として出版され、その1年後に映像化されてテレビで放映されました。この映画では、核分裂の技術をランプの魔人ジーニーに例えて紹介しています。そのジーニーが、映画の中で聞き入れてくれた3つの願いは、「永遠に続くエネルギー源」、「人類の健康と食糧に役立つ魔法の道具」、「平和」でした。
映画の公開から60年近く経った今、Ken + Julia Yonetaniさんは大瀧研究室と一緒に、作品「3つの願い(Three wishes)」を作成しました。この作品はディズニーで最も知られているウィッシュメーカーである妖精のティンカーベルから着想を得ています。しかし、本作のティンカーベルの羽は、小型のチョウであるヤマトシジミ(学名:Zizeeria maha)の本物の翅(はね)に替えられています。実際の作品に使われている翅には、Ken + Julia Yonetaniさんと大瀧研究室のメンバーが協力して卵から育てたものを使用しています。そのチョウは、もともとは福島原発事故の生物影響に関する研究の一部として採集されたものでした。福島第一原発から約20kmの地点で採集されたチョウに卵を産ませ、研究に用いるものの余りを、作品用に飼育しました。
ヤマトシジミを用いた研究では、形態異常や高い死亡率など、内部被曝・外部被曝の影響が様々なレベルで明らかになってきました。福島原発事故が起きてしまった今、私たちはランプの魔人ジーニーに何を願うべきなのでしょうか。あなたは何を願いますか。
作品は、直径9cm×高さ15cmの大きさで、ガラスドームの中にいるティンカーベルは小さな世界(It’s a Small World)の音に合わせて回わります。Ken + Julia Yonetaniさんのホームページで動画を見ることができます。
プロフィール
米谷 健
東京都出身。経済学の学位取得後、東京外国為替市場で3年間働く。その後、人間国宝の金城次郎氏のご長男である陶芸家の金城敏男氏のもとでアシスタントを務めた。2005年には、オーストラリア国立大学芸術学部において修士号を受ける。2008年のAdelaide Biennial of Australian Artをはじめ、多くの作品の展示を行なっててきた。2009年には第53回Venice Biennialeのオーストラリア代表にも選出された。
米谷 ジュリア
生まれは東京。両親は共にオーストラリア人。オーストラリア国立大にて博士号取得後、ニューサウスウェールズ大学やウェスタン・シドニー大学、琉球大学で歴史や芸術理論、カルチュラル・スタディーズの教員や研究職に就き、幅広く論文等を出版している。また、様々な環境保護活動にも参加しており、2000年のIUCN自然保護会議(アンマン)では沖縄の自然保護団体の代表として参加した。