ヤマトシジミ ゲノム プロジェクト

 大瀧研究室では2011年5月から、福島原発事故の生物影響に関する調査を続けてきました。小型のチョウであるヤマトシジミを用いて、野外でのモニタリングや外部被爆・内部被爆の影響など、様々なレベルでの影響について調べ、結果を発表してきました。しかし、DNAやRNAなど分子レベルでの影響については、まだ明らかにできていませんでした。
 そこで、大瀧研究室では「ヤマトシジミ ゲノム プロジェクト」を立ち上げ、放射線の影響を分子レベルで調べることを目指しています。まずはゲノム(DNA配列)の比較から始めていますが、将来的には、RNA発現パターンの比較など様々な視点からの研究も行っていきたいと計画しています。
 ゲノムの比較では、放射線量の比較的高い地域と低い地域でゲノム配列を直接的に比較します。この比較では、「変異の数と放射線量との間に相関関係がみられるか」や、「高線量の地域で生き延びてきた個体は、放射線耐性に関する遺伝子で変異がみられるか」などを調べることが目的です。チェルノブイリの例も含めて、放射能汚染が起きてしまった地域で野生生物をゲノムレベルで調べた例はほとんどありません。分子レベルでの影響を明らかにしていくことで、放射能汚染の生物影響についてより理解が深まると期待されます。

プロジェクトの進捗状況