観光には五感の全てが関係しますが、中でも重要なのがやはり「観る」ことです。ですから観光を創ろうとする人は、まずもって自分自身が物事を様々な角度から「観る」ことができねばなりません。
観光社会学は、観光資源の生滅について、「人と人との相互関係の仕組み」との関連から「観る」分野です。この分野では、資源は自然に生まれてどこかに隠されている、とは考えません。地域の物事に対し、誰かが特定の目的で活用しようと継続的に働きかけた時、初めてその物事が資源として生まれ変わるのです。
ただし当然、同じ物事を別の目的で活用しようとする人も現れ得ます。また、働きかけが継続しなければ、資源は再びただの物事に戻ります。したがって、観光資源の創生と持続を考えるならば、それに対する人々の働きかけの調整のあり方(人と人との相互関係の仕組み)から「観る」ことが不可欠なのです。
このように根本から「観る」力を養えば将来、多様な領域で活躍できるでしょう。
私自身はもっぱら、まち歩き観光やグリーンツーリズム、エコツーリズムなど、いわゆるオルターナティブ・ツーリズムあるいはCBT(コミュニティベースト・ツーリズム)を対象として、公正な観光資源化や、観光による公共的・社会的価値の創出について考究しています。
一方ゼミでのテーマは、「観光と地域」に関わる範囲内で自由にゼミ生に設定してもらってますので、年度によりメンバーにより、とても多様です。詳しくはゼミメンバーページで、卒論タイトル・要旨や3年次調査タイトルをご覧ください。
※大学院への進学を検討している方々へ※
琉球大学にある文系大学院は、「地域共創研究科(Graduate School of Community Engagement & Development)」といいます。この大学院には、観光学だけに特化した学位プログラムは存在しません。
ここにおいて私は「観光社会学・地域社会学」の研究指導・授業担当をしていますが、これは「公共社会プログラム」という学位プログラムの中に位置づけられているものです。このプログラムは、社会学・社会福祉学と政治学と法学に基づく学際的プログラムであり、「地域社会の持続可能性に向けて、公共的かつ平和的な秩序の維持と、健全で福祉に満ちた親密圏の維持という観点」を重視して、課題の解決に結び付く「社会・制度のデザイン(あり方)」の構想・実践力を養うことを目的にしています。
したがって大学院における私の指導は、観光を重要な契機として位置づけつつも、あくまで「公共的かつ平和的」な「社会・制度のデザイン」を通したCommunity
Engagement & Developmentに主眼を置いております。極端に言えば、大学院では研究テーマとして、観光はマストな要素ではありませんが社会・Community要素はマストです。
詳しくは、地域共創研究科のHPをご覧ください(なお私が担当していない経済経営プログラムの中には「観光産業科目群」としてまとめられる授業群があり、それに対応する指導教員がおります)。
越智正樹、2024、「京都府宇治田原町における住民集団間リンケージによる観光まちづくりに関する事例報告」『観光学術学会第13回大会発表要旨集』:96-97.
越智正樹・石黒侑介、2024、『DMOの社会的役割を考える』琉球大学出版会.
越智正樹、2023、「〈都市─農村〉の問い直しから生活と地域の担い手の問い直しへ」(村研年報合評『日本農村社会の行方─〈都市─農村〉を問い直す』)『村落社会研究ジャーナル』59:25-29.
四本幸夫・越智正樹・森重昌之、2023、「コロナ禍後を見据えた観光まちづくりの展望と課題─コロナ禍における観光まちづくり全国調査の中間報告(2)」『観光学術学会第12回大会発表要旨集』:76-77.
越智正樹、2021、「観光まちづくりの再分節化─混在概念の弁別とさらなる外延」『観光学評論』9(1):23-37.
越智正樹、2020、「衰退する地縁・血縁的コミュニティと空き家問題との交錯―沖縄県粟国島の事例をもとに―」本村真編『辺境コミュニティの維持─島嶼、農村、高地のコミュニティを支える「つながり」』ボーダーインク:27-63.
越智正樹、2019、「教育旅行民泊における平準化と個性維持─観光アクター間での価値規範の共創について─」『西日本社会学会年報』17:33-46.
越智正樹、2019、「解題─観光の社会的効果というテーマ─」『西日本社会学会年報』17:1-6.
越智正樹、2019、「農村民泊が直面しているもの─境界をまたぐ実践の良さと困難」西川克之ほか編著『フィールドから読み解く観光文化学─「体験」を「経験」にする16章』:100-119.
越智正樹、2018、「農観連携を診断する視座について」『農業市場研究』27(3):43-45.
越智正樹、2017、「<研究の窓>『観光に期待』をどう対象化するか」『村落社会研究ジャーナル』47:57-59.
越智正樹、2017、「沖縄県におけるグリーン・ツーリズムの現状と新たなネットワーク形成事業」『西日本社会学会年報』15:69-74.
越智正樹、2017、「インターネットとまたがる『コミュニティ』─西表島リゾート開発と『ネット原告団』編成を事例に」秋津元輝・渡邊拓也編『せめぎ合う親密と公共─中間圏というアリーナ』京都大学出版会:113-134.
越智正樹、2016、「まち歩き観光の弁別性と分析基準」『第31回日本観光研究学会全国大会学術論文集』:265-268.
越智正樹、2015、「観光と公共性の社会学─観光社会学の現代的再定位」『観光科学』7:41-54.
越智正樹、2015、「農の観光的現象と農的自然」『西日本社会学会年報』13:19-32.
観光学術学会、地域社会学会、日本村落研究学会、西日本社会学会、日本観光研究学会
観光学術学会 評議員(2023年〜)
日本村落研究学会 理事(2014年〜2017年、2022年〜)、監査(2017年〜2018年)
西日本社会学会 編集委員(2016年〜2022年)
「辺境観光地域における社会的DMO成立要件に関する観光経営社会学的分析」(共同)(科研・基盤研究(C)、R1〜3年度。代表者:越智正樹、研究分担者:石黒侑介)
「パンデミック時代の人口減少地域の観光による持続可能なコミュニティ作りへの比較研究」(共同)(科研・基盤研究(A)、R3〜7年度。代表者:四本幸夫)
「複層的な首里歴史まちづくり─歴史資源の多元性と新たな地図化─」(単独)(琉球大学首里城再興研究プロジェクト、R2年度)
「島嶼・中山間地・農村地域の集落コミュニティ維持機能:アジア国際比較による地域研究対話」(共同)(琉球大学国際沖縄研究所・公募型共同研究、H28〜29年度。代表者:堀江典生)
「都市圏周縁コミュニティにおける地域的公共性構築に関する観光社会学的研究」(単独)(科研・若手研究(B)、H27〜30年度)
「東アジアにおける文化遺産としての鉱山景観マネジメント」(共同)(科研・基盤研究(C)、H27〜30年度。代表者:波多野想、研究分担者:越智正樹)
「グローバル社会における主体的島嶼社会創生をめざした総合的研究」(共同)(琉球大学中期計画達成プロジェクト経費・戦略プロジェクト研究、H27年度。代表者:藤田陽子・狩俣繁久)
「沖縄県における流動的当事者性と地域公共圏の再構築に関する観光社会学的研究」(単独)(琉球大学研究プロジェクト支援事業(若手研究者支援研究費)、H25年度)
「三六災害後の山村内における共同性の変化と復興災害に関する地域社会学的研究」(単独)(科研・研究活動スタート支援、H23〜24年度)
「沖縄県サステナブルツーリズム検討委員会」(県観光振興課) 委員長 2023年度〜
「西表島の持続可能な観光のための認証制度検討会」(県自然保護課) 座長 2023年度〜
「沖縄県観光振興基金検討委員会」(県観光政策課) 委員長 2022年度〜
「観光目的税制度の導入施行に関する検討委員会」(県観光政策課) 委員 2024年度
沖縄県観光まちづくりアドバイザー(県観光振興課) 2024年度
「首里杜まちづくり推進協議会」(県首里城復興課ほか) 構成員 2022年度〜
「那覇市観光審議会」 副会長 2023年度〜
「石垣市観光審議会」 委員 2021年度〜
「観光施設整備運用等に係る民間資金活用導入検討業務委託 有識者会議」(石垣市) 委員 2023年度〜
与那原町創生総合戦略・人口ビジョン策定委員会 委員 2015年度〜
(一社)八重山ビジターズビューロー 外部有識者委員 2017年度〜
沖縄県グリーン・ツーリズムネットワーク 幹事 2016年度〜
「沖縄観光推進会議専門部会(誘客・観光資源)」 委員 2023年度
「竹富町観光振興基本計画策定委員会」 委員長 2022年度
「世界レベルで通用するサステナブルツアー造成における要諦把握及びその実現に向けて求められる体制・機能仮説の構築事業」(内閣府沖縄総合事務局) 委員長 2022年度
(一財)沖縄観光コンベンションビューロー 理事 2021〜2022年度
世界自然遺産「西表島の観光管理計画改定のための作業部会」 委員 2021〜2022年度
「地域ビジネス力育成強化事業」(県中小企業支援課・県商工会連合会)審査委員(2022年度委員長) 2019〜2022年度
「『世界自然遺産登録に向けた受入環境整備に係る実証調査事業』アドベンチャーツーリズムガイド育成協議会」(内閣府沖縄総合事務局)委員長 2020年度
「首里城復興基本計画に関する有識者懇談会:新・首里杜構想検討部会」委員 2020年度
「沖縄地区広域周遊観光に向けた連絡調整会議」(内閣府沖縄総合事務局)委員 2017年度〜
与那原町交通施策検討協議会 委員 2016年度〜
「第4次粟国村総合計画審議会」委員長 2020年度
「中城村観光立村計画検討委員会」副委員長 2020年度
「地域の観光資源を活用したプロモーション事業」(観光庁・内閣府沖縄総合事務局)外部有識者 2019年度〜
沖縄市建設部指定管理者選定委員会 委員 2018年度〜2019年度
沖縄型産業中核人材育成事業「旅行業におけるイノベーション人材育成プログラム」実行委員会(内閣府沖縄総合事務局) 委員長 2017〜2018年度
「沖縄の農家民宿一期一会創造事業」検討委員会(県村づくり計画課) 委員長 2018年度
県グリーン・ツーリズムネットワークあり方検討委員会(沖縄県村づくり計画課) 委員長 2015〜2016年度
沖縄県感動体験プログラム実証委員会(沖縄県観光整備課)委員 2016年度
観光施設等の総合的エコ化促進事業審査委員会(沖縄県環境政策課)委員 2014〜2016年度
「粟国村移住・定住促進協議会」委員 2017〜2018年度
粟国村まち・ひと・しごと創生総合戦略推進会議 委員 2016年度
粟国村空き家等保全・活用基本計画策定委員会 委員長 2016年度
粟国村総合計画審議会 会長 2015年度
粟国村まち・ひと・くらし創生総合戦略策定委員会 委員長 2015年度
竹富町史編集委員会 西表島編専門部会 委員 2013〜2015年度
与那原町 観光客受入に係る交通状況調査委託業務 有識者委員会委員 2014年度
南風原町観光協会 やさしい観光地づくりプロモーション事業 委員 2014年度
保全利用協定制度(沖縄県自然保護課)検討委員会委員 2012〜2014年度
2024年4月 琉球大学 学長補佐(地域連携担当)(任期1年)
2022年4月 琉球大学大学院地域共創研究科 教授
同 副研究科長(〜2024年3月)
2021年4月 琉球大学国際地域創造学部観光地域デザインプログラム プログラム長(〜2022年3月)
(併任)琉球大学観光産業科学部観光科学科 学科長(〜2022年3月)
2020年4月 琉球大学大学院観光科学研究科 研究科長(評議員)(任期1年)
琉球大学国際地域創造学部 副学部長(任期1年)
2018年4月 琉球大学国際地域創造学部 教授
琉球大学島嶼地域科学研究所 併任教員
2017年4月 琉球大学観光産業科学部観光科学科・琉球大学大学院観光科学研究科 教授
琉球大学国際沖縄研究所 併任教員
2014年4月 琉球大学研究推進戦略室(現.研究推進室) 研究企画員(〜2017年3月)
2013年5月 琉球大学観光産業科学部観光科学科・琉球大学大学院観光科学研究科 准教授
2012年4月 琉球大学大学院観光科学研究科 専任講師
2011年10月 琉球大学観光産業科学部観光科学科 専任講師
2011年4月 京都大学文学部グローバルCOE 研究員
2011年1月 京都大学大学院農学研究科生物資源経済学専攻博士後期課程 修了
学位取得論文『場所とコミュニティとの同時創発としての「地元」存立に関する地域社会学的研究─沖縄県西表島における地域開発諸問題を事例として─』
2006年9月 神戸女学院大学 非常勤講師(〜2011年3月)
2006年4月 近畿大学 非常勤講師(〜2011年8月)
2005年9月 佛教大学 非常勤講師(〜2011年8月)
2002年3月 京都大学大学院農学研究科生物資源経済学専攻修士課程 修了
2000年3月 京都大学総合人間学部自然環境学科生物・地球圏環境論講座 卒業